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未来の通信〜星系出雲の兵站1,2

前回通信の歴史をスタートさせましたが、歴史だけでは面白くないだろうと思いこれからどうなるだろう考察を含めて、SF小説などからその通信方法を取り上げてみようかなという無謀な企画がスタートです(笑)

第1回目に取り上げるのは
星系出雲の兵站:林 譲治〜早川書房
第41回日本SF対象受賞作です。

〈あらすじ・1巻説明文より〉
人類の播種船により植民された五星系文明。辺境の壱岐星系で人類外の産物らしき無人衛星が発見された。
非常事態に出雲星系を根拠地とするコンソーシアム艦隊は、参謀本部の水神魁吾、軍務局の火伏礼二両大佐の壱岐派遣を決定、内政介入を企画する。
壱岐政府筆頭執政官のタオ迫水はそれに対抗し、主権確保に奔走する。
双方の政治的・軍事的思惑が入り乱れるなか、衛星の正体が判明する。。。

という感じで異星人との戦いよりも政治的駆け引きや内部的なやり取りが大半を占める小説です。
当然行動原理が不明な異星人との戦闘も読み応え十分、SF大賞受賞も頷ける内容です。

さてそんな世界の通信ですが通常のやり取りは現在とさほど変わりません。
しかし問題なのは宇宙に出たときにあります。
なにしろ出雲星系から壱岐星系までの距離は20光年(そう、秒速30万kmの光が20年かかって進む距離です)
この世界にも宇宙戦艦ヤマトのワープ航法的なものが存在します。
その名はAFD(Alternative Fact Drive)航法。

その部分を抜粋します。
「AFD航法を用いると、主観的には乗員は宇宙船で恒星間を移動していると認識する。
 だがAFDを可能とする物理理論では、宇宙船はこの宇宙から消滅し、別の場所で再現されるという解釈になる。
 つまり、宇宙船内の乗員の意識は連続している(と本人は思っている)が、消滅前と再現後では物理的には別物になっているのだ。」

「AFDを利用すると”本物が偽物になる”かどうかは、物理よりも哲学の領域になってしまうのだが、”差異を識別できないほどの相違が生じる”というのが工学的な解釈である。」

「ともかくAFD航法により、人類は恒星間を移動できるようになった。だがこのシステムは”物体”を移動させる方法であり、”通信”には使えなかった。
 この点は本質的である。超光速航法の問題は”情報”が”光速を超える”ことから生じる因果律の崩壊にあった。
 しかし、AFDは宇宙船の消滅という過程が必要であるため情報の連続性も消える。
 消える前の宇宙船と、再現した宇宙船は理論的には別物なので、”情報が光速を超えない(=光速を超えるであろう連続した情報がない)”のであった。
 故に未来の情報が過去に伝わることもなく、因果律が破られることもない」

「因果律を破らないAFD航法は、まさに因果律を破らないが故に、原理的に超光速通信は不可能だった。
 恒星間で情報を伝達しようとすれば、AFD装備の伝令艦を飛ばすよりないのである。」

というわけで星系間の通信には伝令艦を使用します。
まぁいろいろ突っ込みようがある理論ですが小説が面白いので無視しましょう(笑)

今後も歴史と並行していろいろなところで使用される通信について取り上げていきますのでお楽しみに。
 

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